新作「私小説」が三月七日に出ます。
その名の通り、「在る作家」の日常を描いたとても風変わりな私小説です。
その公式ツイッターアカウントを朝日新聞出版さんが立ち上げてくれまし
た。本文のかなりの部分をここに思い切って公開していく予定です。
あとがきの一部を添えておきます。
ぼくの肉体や神経は油断ならぬ敵であって、いとも簡単にぼくを裏切りま
す。日々はワンダーランドであって、一秒先になにが待っているかも分から
ない。
さらにきわめて過剰な純粋さや潔癖さがあります。事件級の純粋さとは一
体なんなのか? 過激な感傷、近しい者への度を超えた共感、性の曖昧さや
精神的に未熟であること。こういった「事件」は「攻撃的な事件」に比べる
と、その穏やかさゆえに、あまりひとの目に付くことがありません。極度に
人畜無害な「変わり者」。
この「世にも奇妙な恋愛小説家の日常」を徹底して描いてみたらどうだろ
う? 選択的発達者のファンタスティックな私小説。
以前出した、「ぼくが発達障害だからできたこと」という本の中でも、ぼ
くは自分の「極めて偏った個性」についてかなり詳しく書いています。でも
、そこでは理由や意味を考察することに重点を置いてディテールにはあまり
触れませんでした。
なので、その副読本としての「私小説」を描いてみる。たった三十時間ほ
どのあいだに起こる出来事や思いをとことん細かく描写してみる。小説とし
て出せば、さらに多くの一般の読者たちにも読んでもらえるかもしれないし。
マジョリティーである「一般のひとたち」は、ぼくのような人間をあくま
で自分の基準で測ろうとします。あらかじめ自分の中にある本能、価値観、
能力を物差しにしてぼくらを見る。でも、それにはどうしたって限界があり
ます。ぼくらの中のある部分は、本質的に「あなたたち」と違っています。
想像のしようもないほどに。
だから、知ってもらう。いまさかんに言われてるダイバーシティっていう
のもつまりはそういうことだろうから。知ることから始まる。
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