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Konyasai2

「こんなにも優しい、世界の終わりかた」について、少ししゃべってます。クリックすると動画が開きます。

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「こんなにも優しい、世界の終わりかた」の題名について

 そろそろ読了される方もいらっしゃると思うので、ぼちぼち内容に触れていきます。
 
 今回はとにかく「優しい」って言葉がキーワードです。
 ぼくは「世界の優しさの総和を少しでもふやそうプロジェクト」っていうのを、ひとりでひっそりと立ち上げたんですが、この小説もだから、なんとかして題名に「優しい」って言葉を入れたかった(最近、世界がすっかりすさんじゃってるから)。

 最初の題名は違っていたんだけど、それにも「優しい」って言葉は入ってました。
 とにかく、そうすれば、たとえ読んでもらえなくても、書店で表紙を見るだけで、そのひとは「優しい」って言葉に触れることになる。

 言霊って言葉もあるけど、言葉は人間の肉体にも直接影響を与えるぐらい強い力がある。
 攻撃的だったり否定的だったりする言葉はひとを損ない、ポジティブな言葉はひとを生かす。

 まあ、あとはバランスですね。健全なバランス。それがいまはちょっと攻撃的な方に傾いている気がする。

 ヴォネガットじゃないけど、「たまにはひとに優しくしようよ、そうすれば気持ちがいいよ」って話です。

 すでに出版社の方や応援して下さっている書店さんとかは、本人も知らぬままにプロジェクトのメンバーになってます。もちろん読んで下さった方たちも。世界中に拡げたいと願ってます。

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TVCM

「こんなにも優しい、世界の終わりかた」のTVCMがつくられたんですが、それがYouTubeで見られます。

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「こんなにも優しい、世界の終わりかた」 続き

 今日で、ほとんどの書店さんに並んだんじゃないかと思います。
 小学館のサイトに行くと、試し読みが出来ます。19ページ、全体の約5%ですから、かなりのボリュームです。
 (よく読んでみたら、本文の39ページまでだから10%もありましたね)

 こちらから

 

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「こんなにも優しい、世界の終わりかた」

Konyasai

 三年ぶりの長編、「こんなにも優しい、世界の終わりかた」が8/22に発刊されます。小学館からは「そのときは彼によろしく」以来、実に八年ぶりとなります。


 小説の始まりはこんな感じです。初稿なので本とは違っているかもしれません(以下同様)。

「どうやら世界は本当に終わりを迎えるらしい。
 なんだか信じられないけど、そしてどうしようもなく悲しいけど、それが真実だ。
 終わりは驚くほど静かだ。想像していたのとはまったく違う。
 青い光、それがぼくらを終わりに導く。いまだに、それがなんなのかちゃんと説明できるひとに会ったことはない。けれど、とにかくあの光に覆われたらもうお終いだ。
 ひとも獣も、鳥も木も、土も石も水も、なにもかもが動きを止め、そしてたぶんそれきりもう二度となにも起こらない。
 すでにそうなったひとたちをぼくはたくさん見てきた。柔らかな青い光に照らされた町に彼らは佇む。みんななんだか幸せそうで、不思議なほどその光景は美しい。
 町に入ったことのあるひとたちの話もずいぶんと耳にした。彼らの肌は誰もがみんなほんの少しだけ青ざめている。
 ある若者は、住人たちはまるで生きているみたいだった、と言った。柔らかかったよ。それに温かかった。いまにも動き出しそうだったよ。
 けれど別の誰かは、いや、住人たちの肌はまるで大理石みたいにコチコチに固まっていた、と言い立てた。驚くほど冷たかった。
 どっちが本当なのかぼくにはわからない(じつはぼくも、一度だけ青い光の中に身を置いたことがある。だけどそのときは、町にはまったくひとの影がなかった)。
 青く染まった土地に入るのは危険だと多くのひとたちが言っている。うかうかしていると取り込まれて逃げ出せなくなる――」

 こんな感じ。

 登場人物。

 吉沢優――主人公(ぼく)。24歳。六歳でお母さんを亡くし、時計職人のお父さんとふたり暮らし。「ぼくは生まれながらの平和主義者だった。もしかしたら自分は天国から地上に落とされた落第天使なんじゃないかしら、と思ったこともある。そのぐらい、ぼくはとびきり好戦的なこの世界に激しく適応不全を起こしていた――」
 そういうひと。世界が終わると知って、中学校のとき好きになった女の子、雪乃に会いに行くことにする。スピログラフをフリーハンドで上手に描く。

 吉沢拓郎――優のお父さん。「毎日、同じ時刻に同じ道を同じ服を着て仕事場に通った。彼は同じメーカーのスタンドカラーの白いシャツを五枚買い揃えていた――拓郎は時間に厳格で、暦に忠実だった。時計職人になるべくして生まれてきたのだと言ってもいいくらいに――」
 そういうひと。でも、信じられないほどのロマンチスト。BLTサンドが大好き。放っておくとシリアルしか食べずに痩せてしまう。

 吉沢由美子――優のお母さん。すごく優秀なデザイナー。「彼女は美人なだけでなく勉強もできたし、運動だって得意だった。ハードルの選手で、グラウンドを走るその姿はまるで牝鹿のようだった――」
 そういうひと。なのになぜか、クラスの底辺を漂う拓郎にぞっこん惚れてしまう。まったく自分が美人なことに気付いていない。いつも黒い服を着ていて「わたしは魔女なの」と優に言う。「 ホルディリディア」が好きな歌。でも唄うのは下手。

 白河雪乃――雪の日に生まれたのでこの名前。とても色が白く、みんなから「名前が似合いすぎてる」と言われる。中学のとき、気持ち悪くなった優に屋上で膝枕してくれる。

 「彼女が、いいのよ、と言ってくれたので、その柔らかな腿を枕がわりに使わせてもらうことにした。もう、遠慮しているだけの余裕もなかった。
 ぼくの後頭部は彼女の腿と腿とのあいだにすっぽりと収まっていた。
 なんだかすごく不思議な気分だった。まるで初めから用意されていた場所のようだ。二本のスプーンのように、とひととひととが綺麗に重なり合うことを表現する言葉があるけど、こういうのはなんて言えばいいんだろう? すごく手の込んだパズルのように、ひと組の男女が隙間なく重なり合う形には、たぶんいくつもの解答があるんだろう――」

 こんな感じ。

 雪乃のお母さん――ナース。雪乃とふたり暮らし。雪乃はお父さんが誰かを知らない。勤めていた病院の先生と結婚するが、先生の親族から大反対される。

 瑞木さん――旅の途中で出会ったひと。ずっと一緒に旅をすることになる。もうひとりの主人公。29歳。自称チンピラ。

 「彼は自分のことを、よた者と言い、ちんぴらと言い、ろくでなしなんだとも言った。彼はすごく語彙が豊富だった。「まあ、そういうことさ。生まれながらの外れ者なんだよ。まともな仕事に就いたこともないし、そのための努力をしたこともない――」

 そういうひと。

 なんだけど、世界が終わると知って、幼馴染みで元恋人の絵里子さんに会いに行こうと決意する。高校を中退して以来、有名な文学作品を先生として世界を学んできた。そのせいかちょっと科白が大仰で古くさい。

 洋幸――優の絵画教室の友だち。のちに雪乃とも友だちになる。生まれながらのアウトサイダー。
 
 「彼は髪がコイルのように巻いていて、しかもそれを伸ばし放題にしているものだから、頭がひとよりもはるかに膨らんでいるように見えた。それに、ぼくと同じぐらい――もしかしたらそれ以上に――痩せていて、自分の身体を支える筋肉が足りないのか、いつもへんな感じに傾いでいた――」

 そういう子。自分だけの言語を持っていて、そこにはポジティブな単語しかない。愛を表す単語だけで三十もある。高いところに登ったり、高いところから飛び降りたりするのが好き。怖い夢を見ておねしょをしてしまう。
 中学の途中で自主退学して旅に出たため、ふたりとはそれきりになってしまう。

 おおむね、このひとたちで物語は進行していきます。ロードノベルなので、途中で出会うひとたちはたくさんいます。みんな世界が終わると知って、自分の愛に正直に生きようとしています。

 主人公の家族の名前を見て「あれ?」と思ったひとも多いと思いますが、そうです、あれは完全に「いま、会いにゆきます」の三人を意識して付けた名前です。設定は大きく違うけど、これは「いまあい」の巧と祐司がその後の人生をどう生きたか、というある種の続編的な物語でもあります。あのふたりなら、世界の終わりが来たなら、こんなふうに振る舞うんだろうな、という。

 あるいは、少年ふたりと少女ひとりの友情は「そのときは彼によろしく」にも似ています。父親とひとり息子のふたりぐらしの部分とかも。

 また、なにかあったら追加していきます。

 
 

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