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新刊 「ぼくらは夜にしか会わなかった」 祥伝社

 Bokura

 オフィシャルサイト
 http://www.shodensha.co.jp/bokuyoru/


一年二ヶ月ぶりの新刊です。10月の27日発売予定となっています。
祥伝社の「Feel Love」に書いてきた短編が五本と、百五十枚を超える中編一本からなる一冊です。

 「白い家」「スワンボートのシンドバッド」「ぼくらは夜にしか会わなかった(「赤道儀室の幽霊」改題)」
 「花の呟き」「夜の燕(「I'm Coming Home」改題)」

 そして書き下ろし「いまひとたび、あの微笑みに」

 これはちょっと前、ここでもとりあげた「ワスレナグサ」という掌編を長くしたものです。
 「そのときは彼によろしく」にも書いた「長い長い眠り」に就くことが定めの子供たちが、ひとつの施設に寄り添って暮らしている、その二年間の記録です。ヒロイン眞理枝。その一番の親友、弘海。彼は少年なんだけど、まるで少女のような風貌で、自分でも「ぼくは男でも女でもないんだ」と言っています。そして眞理枝が恋をする相手の少年、幸哉。みな十五歳から十七歳ぐらいの年齢です。彼らを親や兄のように慕う年少者たちもいます。彼らはひとつの家族のようにして暮らしています。

 彼らが暮らしていた時代から二十年後に、眞理枝がしたためた手記が見つかり、それが物語の中心となります。
 追憶、郷愁、夢、幻想、そういったぼくがこれまで書いてきたモチーフがここにすべて凝縮されています。
 舞台となるのは古い洋館で、施設のまわりには天文台、植物園、修道院、民間飛行場があります。
 彼らはそこで恋をし、別れを経験していきます。

 眠れぬ子供たちへの読み聞かせ、賛美歌の合唱、熱を出した夜に付き添い身体をさすってくれる仲間、別れの日の儀式、きらびやかな夜のパーティー、「ガラスの動物園」「大いなる遺産」、ビートルズの「ガール」―――

 「世界中が雨だったら」で書いた、「どこへ逃げれば?」という問いかけの答えがここにあります。
 眞理枝は施設を「世界の涯に置かれた最後の避難所」と呼んでいます。あまりにも感じやすい心を抱えて、このがさつで我欲に満ちた世界でうまく生きていくことができない子供たち。
 書いているあいだは、ぼくもここで暮らしていました。そしていまも読み返すことによって、この場所に立ち帰ります。ぼくにとってかけがえのない場所となりました。きっと何度も何度も読み返すんだろうな、ってそう感じています。

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