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もろもろ、なんやかや

 発売予定日は、すごく静かに過ごしました。ここのところ原稿もいっさい書いていないので、ほんとに静かに。

 とにかく夏から秋、そして冬に向かう移行期は体調が乱れやすいので、それを抑えることに専心しています。 

 季節が変わりはじめた頃、大きな発作が来て、そこからちょっと臆病になっている感じです。真夜中にかつてないほどの激しい突発性頻脈の発作に襲われ、すわハートアタック!? と思い、一瞬死を覚悟しました。
 その前から不整脈は続いていたので、危ないかな? とは思っていたのですが、やっぱり来てしまいました。
 長く続くと気を失うこともあるので、こういったときのために枕元に置いてある冷水を一気飲みして、そこから徐々に落ち着く方向に。母親がこれでなんども救急車を呼んでいるので、そうなるかなあ、と思ったのですが、なんとかそこまで行くことなく朝を迎えることができました。

 
 まあ、これだけでなく、脳の興奮がもたらす症状が一気に出始めていたので、新たな作戦に踏み切りました。

 まずはマグネシウムの摂取量を増やす。
 大雑把に言って、カルシウムはアクセル、マグネシウムはブレーキとして働くので、ぼくのような暴走しやすい人間はマグネシウムをいっぱいとるべきなんだろうと。
 サプリでもいいんだけど、ぼくは食事で摂りたかったので、アオサとむきゴマを積極的に摂取。
 できれば一日に500mg摂りたい。どこかの研究で、そのぐらい摂ったら子供が落ち着いたとか書かれてあったので。
 ゴマはたしかにマグネシウムたっぷりなんだけど、皮にカルシウムもたっぷり含まれているので、ぼくにはアクセルはもう充分足りているから、それでむきゴマという選択。そうとう食べてます。なんにでもかける。

 美味しいですしね。

 あと、半身浴。これも昔からやっていたんだけど、けっこう適当だったので、今回はお湯の温度、量、時間を厳密にして。
 ネットで調べるといろいろ出ていたのでそれに従う形で毎日。古い別マ系の少女マンガを読みながら。

 あとやっぱり一番効果を期待しているのは「徘徊」です。
 走ると不整脈が出るので、ゆるゆると家のまわりを徘徊する。いまは仕事をしていないので一日中。
 いよいよまずい、となったら日に二十キロ歩くつもりです、と前にも書いたけど、いまがまさしくそんな感じなので、おおむね毎日二十キロ弱。ふらふらよたよた、散歩している老人に抜かれたりしながら。

 問題は急激に体重が減ってきたこと。毎日二十キロのウォーキングはさすがに来ます。とくに食べる量が増えるわけでもないので。むしろ徘徊効果なのか、頭の熱がどうにか胃腸の辺りまでさがってきたので、耳鳴り、目眩が和らいだかわりに、またふたたび胃痛が。なので実際には食べる量は減っています。

 これはもう、自己との勝負。どっちが勝つか。なんとかこれで秋を乗り切れば、安定期に入り、もう少し落ち着くと思うのですが。

 こんなことやってると、あたまはそれこそ秋空のごとく澄み切ってきます。これはぼくだけでなく誰にでも有効なこと。現代人は五感がそうとうに鈍っているから、ちょっとでも感受性を上げれば、それだけでもうひとり抜け出た状態になれるはず。見通しいいですよ。

 
 
9788862566834g

 これはイタリア版の「そのときは彼によろしく」
 これも今月発売。本が出るのは嬉しいです。
 
 思えば、小説をウェブで全文公開するのは、もう十年ぶりぐらい? 原点に立ち帰ったような気もします。
 「door into」に、「VOICE」を載せて、いろんな方たちから応援されて。体力があれば、仕事とは別に、また小説を書いてウェブで公開ということもできるんでしょうけど、その仕事さえ覚束ない状態が続いているので、今回、こういった形で載せられたのはほんと嬉しいです。

 ここから始まって、はるか西の国まで。ちょっと不思議な気持ちになるときもあります。
 
 
 

 

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「ぼくらは夜にしか会わなかった」今日発売日

 いちおう、公式の発売予定日は今日になってます。ただ、もう二日前ぐらいから書店にちらほら置かれているという報告も受けています。

 十四ヶ月ぶりの新刊ですから、ぼくにとっても大きな出来事です。なので、編集のひととも相談しながら、今回は公式サイトづくりに、かなりかかわってきました。

  「ぼくらは夜にしか会わなかった」公式サイト

 今回のサイトづくりにあたって一番強くお願いしたのは、短編一篇の全文公開をしたいということでした。
 祥伝社さんが、それを快く承諾して下さって 「白い家」全28ページを公開することができました。

 様々な状況で本を買うことができない方がいらっしゃるでしょうし、すべての書店さんにこの本が置かれるわけでもありません。なので、ここにくれば六篇のうちの一篇でも、とにかく読むことができる。そういうふうにしたかったんですね。
 また、プロの女性の方に朗読をお願いして「花の呟き」の十八章のうちの三章を公開しています。本を買わなくても、ここにくれば、ぼくが描いた世界をかなり感じ取ることができるようになっているはずです。

 せっかく書いたのですから、まずは多くのひとに読んでもらいたい。それと、これだけのものを読めば、この本との相性が良いかどうか、その判断もつきやすいはずです。購入するときの判断材料として、ここを利用していただければと思います。

 さらに欲張ったのが映像と音楽です。もともとぼくがこの「モノローグ」で公開していた映像や音楽を素材として、各短編の「イメージビデオ」をつくっていただきました。随時公開されるはずです(朗読のBGMはここでは公開していなかったものです。ケルト的な旋律です)。

 言葉を尽くすよりも、数秒の映像、ほんの小さな旋律が、「思い」を強烈に表すことができるときもあります。
 それをここで試したかった。

 本とこのサイト、ふたつが補完し合って、ひとつの世界を形づくる。新しい試みですが、ぼくみたいな人間にはすごく合っている表現方法のような気もしています。

 ちなみに書店さんに置かれているポップにぼくが書いた赤道儀室のイラストが載っているらしいです。まだ直接見たわけではないので確かではないのですが。

 ということで、今回は、かなり力を入れて発刊に立ち会ってます。
 
 

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新刊 「ぼくらは夜にしか会わなかった」 祥伝社

 Bokura

 オフィシャルサイト
 http://www.shodensha.co.jp/bokuyoru/


一年二ヶ月ぶりの新刊です。10月の27日発売予定となっています。
祥伝社の「Feel Love」に書いてきた短編が五本と、百五十枚を超える中編一本からなる一冊です。

 「白い家」「スワンボートのシンドバッド」「ぼくらは夜にしか会わなかった(「赤道儀室の幽霊」改題)」
 「花の呟き」「夜の燕(「I'm Coming Home」改題)」

 そして書き下ろし「いまひとたび、あの微笑みに」

 これはちょっと前、ここでもとりあげた「ワスレナグサ」という掌編を長くしたものです。
 「そのときは彼によろしく」にも書いた「長い長い眠り」に就くことが定めの子供たちが、ひとつの施設に寄り添って暮らしている、その二年間の記録です。ヒロイン眞理枝。その一番の親友、弘海。彼は少年なんだけど、まるで少女のような風貌で、自分でも「ぼくは男でも女でもないんだ」と言っています。そして眞理枝が恋をする相手の少年、幸哉。みな十五歳から十七歳ぐらいの年齢です。彼らを親や兄のように慕う年少者たちもいます。彼らはひとつの家族のようにして暮らしています。

 彼らが暮らしていた時代から二十年後に、眞理枝がしたためた手記が見つかり、それが物語の中心となります。
 追憶、郷愁、夢、幻想、そういったぼくがこれまで書いてきたモチーフがここにすべて凝縮されています。
 舞台となるのは古い洋館で、施設のまわりには天文台、植物園、修道院、民間飛行場があります。
 彼らはそこで恋をし、別れを経験していきます。

 眠れぬ子供たちへの読み聞かせ、賛美歌の合唱、熱を出した夜に付き添い身体をさすってくれる仲間、別れの日の儀式、きらびやかな夜のパーティー、「ガラスの動物園」「大いなる遺産」、ビートルズの「ガール」―――

 「世界中が雨だったら」で書いた、「どこへ逃げれば?」という問いかけの答えがここにあります。
 眞理枝は施設を「世界の涯に置かれた最後の避難所」と呼んでいます。あまりにも感じやすい心を抱えて、このがさつで我欲に満ちた世界でうまく生きていくことができない子供たち。
 書いているあいだは、ぼくもここで暮らしていました。そしていまも読み返すことによって、この場所に立ち帰ります。ぼくにとってかけがえのない場所となりました。きっと何度も何度も読み返すんだろうな、ってそう感じています。

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