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言葉

前々回、小説で何かできれば、って書いたんだけど、ここに引用するっていうのもひとつの方法だと思い至りました。

 「I'm coming home」
 
 彼女の躰は、彼がずっと思い描いていたとおり儚く、少しでも力を込めれば、たやすく壊れてしまいそうだった。
 美織を守りたい、と彼は思った。生きて欲しい。
 つまるところ、この思い、遠い先の別離を予感し、それに抗おうとする心の在り様こそが、彼の、彼らの愛だった。


 「透明な軌道」
 
 ぼくらは長生きしますよ、と言って彼は笑った。
 真帆はその言葉が嬉しかった。
 愛って「生きて欲しい」って強く願うことなのかもしれない。彼女はそんなふうに思った。母親が子供を育てるのも、恋人が相手の身体を気遣うのも、愛があるから。

 
 エッセイ「きみはぼくの」あとがき
  
 幼いぼくの目から見た母はあまりに弱く、とても長くは生きられないひとのように映っていました。明日にはもういなくなるんだ。毎日そう思いながら、ぼくは息を潜めて母の姿を見守っていました。
 でも、彼女は人生を生き抜きました。すごいな、と思います。そして、母はぼくのために、こんなにがんばってくれたんだなって、そんなふうに思ったりもします。
 ぼくら母子はあまりにも特殊な結びつき方をしていたために、いまでも、ぼくは自分をうまく立て直すがことができずにいます。
 まあ、でも悲観はしていません。ぼくには奥さんも子供もいますから。彼らのために生きていく。ずっと母の背中をさすった手で、今度は奥さんの背中をさすります。
 

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