何年かぶりに坊主頭に。自分で電動バリカンを買ってきて、ちゃっちゃと刈ってしまいました。夏になり、なんか内分泌が高まってきたせいか、体温が夕方、38度近くまで行くようになり、脳に熱がこもるとアホになるので、いかにも熱の籠もりそうなくるくるパーマをすっきりと。楽です。
以下は、2004年の10月に、このモノローグに載せた言葉。
『 吸血鬼ならぬ吸涙鬼の小説を書こうかと思って。
血ではなく、悲しみの涙を吸って生きている一族。吸われたひとは、吸涙鬼になっちゃう。そうすると、もう自分では涙を流さない。だから悲しみが癒されることもなく、ずっと苦しい思いを抱えたまま生きていくことになる。レイ・ブラッドベリを読んでて、そんなプロットがふっと湧きました 』
なぜだか、「桜咲く...」を書いているとき、ふと、このことを思い出し、そしたら爆発するようにアイデアが噴き出してきて、どうしてもそのことを書きたくなりました。
四年も前に考えついたアイデアですが、その後発展しなかったのは、「ヒーロー物」にしたいという思いが逆に枷になって、なんかうまくいかなかったんですね。
でも、「桜咲く...」書いてて、「ああ、こういう風に、特殊な体質だったり人格だったりする人間、いわば自分の分身を吸涙鬼にしたら、いいのかもしれないなあ」と思い立ち、そしたら、なにも主人公をヒーローにする必要はないんだってことに気付きました。
ぼくの五感過敏や、とくにうちの奥さんのような光過敏ですね(今年も、またショック症状起こして、すごく苦しんでましたが)、こういったものが、医学知識のない中世には、なにか特殊な人間のように見えたんじゃないのか。ぼくの軽い双極性的な浮き沈みも、例えば、狼男の月齢周期と似てなくはない。
あえて作り込まずに、自分の体質をそのまま反映させた主人公を描けばいい。
吸涙鬼は、涙の中の特殊な成分を飲まないと活力を失ってしまう。
なので、それぞれが目を付けた異性に取り付き、恋人のように振る舞うことで、自分の行為をカモフラージュしている。
大前提として、協調的で、非暴力的。戦闘能力は0に等しい。ただ、五感が優れていたり、他者の感情を読み取る力があったり(軽い感応力)、足が速く、身が軽く、長距離を走り続けるスタミナもある――とことん、自分のことですね。
本家の吸血鬼と同じく、不死はともかく、不老なので、そこに目を付けた一族から追われていたりする(おお、バンパイア物っぽい)。
彼らは、恋人のように振る舞いながら、パートナーに何気なく触れ、その心に冷気を流し込む。メランコリックですね。そして相手はわけもなく涙を流してしまう。
これは、けっこう危険なことで、いくども繰り返すうちに、パートナーがその悲しみに堪えかねて、みずから命を絶ってしまうこともある。
元来、他者の苦しみに敏感な種族なので、そのことにひどく苦しんでいる。
解決策として、パートナーとの接触期間を短いものにして、次々と渡り歩いていくことで、相手のダメージを最小限に抑えるようにする。
でも、すぐ次のパートナーを見つけられるわけもなく、空白の期間は、かなりつらかったりする。
あまりに長く涙を吸わずにいると、活性が著しく落ちて、仮死状態になる。代謝をとことん落として、ずっと眠り続ける。二十年とか。(その彼的世界)
世界では、毎日たくさんのひとが涙を流しているので、空気中に揮発したその涙を、少しずつ取り込むことによって、活性を取り戻す。
親からの遺伝。けれど、その親は失踪中(お約束)
彼は自分の体質に苦しむが、そのわけは初めのうちはわからずにいる。
仲間がいることさえ知らず、孤独なまま、旅をしている。
おお! なんかアメリカのTVドラマみたい。「スーパーナチュラル」とか、「ダークエンジェル」とか。マックスに近いかも。トリプトファンが涙になるわけで。
向こうのTV局、買ってくれないですかね、このアイデア。
でも、ヒーローじゃないから駄目でしょうね。ああいったドラマに比べると、こちらはもっと、生理的、肉体的な感覚の話になりそう。閉じていて、より恋愛色が強い。
体質が他者にうつるかどうかは、まだ決めてないけど、やっぱりこの一族の涙を飲むとそうなっちゃうのか。
ああ、そうだ、最初に思いついたのが、彼らの特殊能力に相手の「免疫力」を高める、ってのがあったんだ。ある種の寄生だから、宿主に死なれては困る。それでこんな力を発達させてきたって設定。
病を抱えている少女と出会い、彼女を治してあげる。彼女は本気で好きになっちゃいますよね。でも、長くともにいることはできない。主人公が抱えているジレンマ。
あと、同種との出逢い。異性同士だったらどうなるのか? やっぱ、初めて真の恋に落ちちゃうんでしょうね。相性抜群。
なかには、シニカルで冷酷な奴もいて、どんどんパートナーを取り殺しちゃうかもしれない。これもまたこの手の話ではお約束ですが、ぼく自身はあんまり興味ないな、内輪もめって。こういうのは書いてて楽しくない。
いまはまだ、思いつきの段階ですが、いずれ時間ができたら、さらに詰めていこうと思ってます。この四年間のあいだに、実は少なからぬひとたちから、「吸涙鬼はどうなったの?」って問い合わせいただいてて、けっこう気になってはいたんです。まずは報告まで。